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「原典版」購入前に意識したい3つのこと


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そもそも「原典版」とは…?

 原典版(Urtext)とは、「校訂上の付け足しや変更をしないで作曲家の意図を忠実に提示しようとした楽譜」です。この原典版は、音楽を深く学ぼうとする際に欠かせないものですが、購入する前は以下の3つのことに気をつけなければいけません。

  • 原典版は一つではない
  • 原典版にも校訂者の解釈が含まれている
  • 解釈版も並行で利用する

原典版は一つでない

 原典版は、校訂上の付け足しや変更のない作曲家の意図を忠実に提示しようとした楽譜ですが、原典版にも「ウィーン原典版」や「ヘンレ原典版」「ベーレンライター原典版」などいくつかの種類があり、それぞれの原典版で記載されている内容にも差異があります。

 これらの差異は、原典版を作成する際に、用いられている資料が異なる場合があるために生じるものですが、いずれの原典版においても多くの資料を精査した上で、作曲家の意図を忠実に提示しようとしています。そのため、全く信頼できない版があるというわけではありませんが、購入する際には、原典版にもいくつかの種類があり、記載内容が異なる場合があることに注意をしましょう。

原典版にも校訂者の解釈が含まれている

 原典版において重要視されるのは作曲者の意図です。しかしながら、原典版の作成にあたっては、自筆譜や初版などの資料のうち、どの資料が本当に作曲者の最終的な意図を示しているのかという問題が常に付きまといます。

 この問題に対して、校訂者は資料批判やテクスト批判を行うことで、複数の資料の中から作曲家の意図を最もよく表しているでありう資料を决定しますが、校訂者によっては、この最も作曲家の意図を表していると判断した資料が異なります。こうした批判の過程で、原典版には校訂者の解釈が大きく反映されます。そのために、原典版の種類により、アーティキュレーションや、装飾音、そもそも音が異なっているのです。

 また、同じ出版社による原典版においても、出版年が異なれば内容も異なってきます。それは、信頼できる新しい資料が発見されれば、その資料の情報も加えることで、原典版は都度更新されるためです。

解釈版も並行で利用する

 原典版の楽譜を利用する際には解釈版と合わせて比較する必要があります。それは、原典版のみでは、当時の演奏様式や演奏習慣に余程詳しくない限り、作曲者の意図を読み取って演奏することが困難だからです。

 原典版では、校訂上の付け足しや変更は行われていません。そのため、作曲された時代には演奏習慣として当然とされていたことは、記譜されていない場合が多くあります。また、時代によって装飾音の表現の仕方も異なるため、実際に原典版のみで演奏をしようとすると、どのように弾いて良いのか迷う部分が多く出てきます。そこで、活躍するのが解釈版です。

 解釈版では、原典版だけでは読み取れないような、それぞれの時代における音楽様式と演奏習慣を校訂者の解釈で反映されています。なので、原典版には記譜されていない、装飾音の弾き方や、フレーズの捉えかた、表現記号などが記載されています。この解釈版を適切に利用していくことで、当時の演奏習慣を理解するための助けに必ずなるでしょう。

さいごに

 原典版は、すべてが作曲者の自筆譜をそのまま記載しているではなく、常に変化し続けています。また、原典版にもいくつか種類があるため、それぞれの原典版の特徴を理解してから買うことをおすすめします。もし、難しいようであれば、ご自身の先生にどの原典版を購入すればいいか相談してみるのも良いでしょう。

 練習の際に、原典版か解釈版のどちらか一方のみで学習を進めてしまうと、間違った解釈や演奏をしてしまう可能性が大きくなります。曲に対する正しい理解を深めるためにも、原典版を購入する際には、解釈版も購入していくつかの楽譜を比較してみましょう。

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